良いことでもあり、悪いことでもある
「Pantera」の音質は非常にクリアだ。
パートごとの分離がとてもはっきりしている。
どのパートも完全に聴き取れる。
ギターの音なんかは、重くてヘヴィなんだけど、聴いていて心地よい音質に仕上げられている。
カンペキに整備された音といった印象だ。
「Pantera」だけではない。
最近のバンドはそういう音質のものが多い。
これは良いことでもあり、悪いことでもある。
「Pantera」のような音楽にはこのようなクリアな音像が不可欠だ。
魅力を何倍にも高めてくれている。
しかし、このクリアな音質をスラッシュメタルやデスメタルに適用することは、良いこととは限らない。
一概には言えないのだが、魅力や生々しさを逆に失わせる結果となることもある。
生々しさや衝動性などは表し切れていない
昨今、再びスラッシュメタルをプレイするバンドが見られる。
そのようなバンドの大部分は、現在の音質でアルバムを作っている。
確かに一聴したときの迫力はものすごいものがある。
ガツンとくる感じだ。
その代わり、生々しさや衝動性などは表し切れていない。
昔ながらの音質は、現代のリスナーには迫力不足に感じるのかもしれない。
しかし、その方が伝わるものが、意外と多くある。
「Toxic Holocaust」なんかは、古くさい音質だ。
が、この生々しさ、衝動性がびんびん伝わってくる。
昨晩「Slayer」のニューアルバム「World Painted Blood」を聴いた。
久々にドキドキした。
昔の音とは違うけど、生々しさがきちんと伝わるサウンドだった。
2009.11.9 Freakz
(追記)
最近では技術も進歩して、素人でもクリアな音作りをできるようになっている。
AIの発展がそれに寄与しているのだ。
しかし、完璧に整備された音が最上とは限らないのだ。
「Motörhead」のライブアルバムはクリアだったか?
「Venom」のアルバムの音質は良好だったか?
きっと今が転換点。
整備しすぎない音にシフトしていく時代だよ。
2周目に入ったんだきっと。
より自然な、強調しすぎない音作りが求められると確信している。
2022.4.23 Freakz
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