アルバム「C9」 Album”C9″

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また音楽を作り、自分を表現したい

———-随分と久しぶりにアルバムを出したみたいだけど?

音楽の制作からは10年以上も遠ざかっていたんだ。

理由は様々あるけど、とにかく、僕の中に創作の意欲が残っていないと感じていた。

それが、ひょんなことから、自分の時間を多く持つ機会に恵まれたのさ。

自分と向き合うことで、長らく冬眠していた、消えたと思っていた「欲求」が、また顔を出し始めた。

また音楽を作り、自分を表現したい。

そう思うようになったのが2020年の5月頃だったと思う。

 

作曲できるアプリケーションを与えてくれた亡き父には感謝しかない

———-曲作りはいつ頃から初めたんだい?

高校生の頃から作曲の習作は続けていたよ。

稚拙なものが多くとても公開できるようなものではないけど、その数は200曲以上はある。

———-すごい数だね!

その中でもまあマシなものはいずれ何らかの形で発表するかもしれないね。

僕が高校1年生だったのは1995年。

ご多分に漏れず我が家にもWindows95がやってきた。

そんなネット黎明期に、作曲できるアプリケーションを与えてくれた亡き父には感謝しかないよ。

とにかくハマったね(笑)。

音楽を作ることがこれほど楽しいことだとは夢にも思わなかった。

趣味の範疇だけど、作曲をし、詞を書き、時には知人友人に詞をお願いし、実家の自分の部屋で歌録りをした。

———-宅録の先駆けじゃないか。

今思えば大変な近所迷惑だけど、当時はおおらかな時代だったんだ。

作った楽曲はCD-Rに焼いて楽しんだ。

CDラベルシールというものに自分のデザインしたレーベルを印刷して、ペタっと貼っていたものさ。

歌詞カードは家庭用プリンターとディスクカッターとステープラーだよ。

冊子の中綴じ用のステープラーを事務用品専門店に父と行ったことも良い思い出だね。

10枚とか20枚作って、友達に配って、それで満足していたんだ。

可愛いもんだろ(笑)?

音楽づくりをやめた

———-音楽活動は継続的にやっていたのかい?

社会人になって、そのような趣味に割く時間がなくなってしまった。

仕事をしながらもコツコツと作曲は続けていたんだけど、限界を感じ始めてね。

とにかく時間が取れないんだ。

運良く取れたごく僅かな時間に、疲れた体から出てくるアイデアはロクなものではなかったよ。

だから自然消滅的に、僕は音楽づくりをやめてしまったんだ。

今の自分から何が出てくるのか、興味があった

そして今の話だよね?

昔話で終わってしまうところだったよ、危ない危ない(笑)。

冬眠していた僕の創作意欲は雨後の筍のごとくにょきにょきと顔を出して、僕を制作へと向かわせた。

僕は、以前から貯めているアイデアはあえて使わないことにした。

良いアイデアが出てきそうな気配があったし、何より今の自分から何が出てくるのか、興味があったんだよ。

なにより新しいことにチャレンジしたいという気持ちが強かった

———-久しぶりの制作だけど、なにか変化はあったかい?

今作は、詞を先に作ることにした。

今までは曲を先に作っていたんだけど、スタイルを変えることにしたんだ。

結果がどうなるかわからないワクワク感があったし、なにより新しいことにチャレンジしたいという気持ちが強かった。

10年の歳月は、僕の中にある「言葉で表現したいもの」の形も少なからず変容させた気がした。

まぁ、細かいことは各曲ごとのインタビューに取っておこう。

10年前から技術はすごく進歩していて、音楽制作の環境はすっかり変わっていた。

僕は古いコンピューターや音源、アプリケーションを処分し、全て揃え直した。

防音の録音ブースも拵えたんだよ。

ギターもベースも、AIを搭載したリアルな音源が次々と発売されていた。

昔は、音源といえば外付けだったんだぜ。

———-ローランドのSC-88Proとかね。

ミキシングもマスタリングも、プラグインの進歩がめざましいね。

マイクはちゃんとしたコンデンサーマイクを買った。

それをちゃんとしたオーディオインターフェイスにつないで、と、それなりの環境で作業を進め始めた。

もちろん、衣食住などの生活費を稼ぎながらだからね、スケジュールを上手くやりくりできない苛立ちなどが多くあったけど、総じて一からものを作る喜びに満ちた時間だったよ。

気に入った言葉が浮かんだらすぐにメモ。

良いリフが浮かんだらすぐに録音。

てな感じで材料を貯めて、いよいよ構築に取り掛かった。

アルバム全体を通過する芯のようなものが見えるような作品にしたかった

———-曲作りは順調だった?

いや、曲の構成には頭を悩ませたよ。

退屈になってはならないし、散漫になってもならない。

僕は、複雑性の中に筋が一本通った楽曲を目指しているんだ。

収録曲は10曲だよ。

キリが良いという理由だけで、なんとなく初めから決めていたんだ。

そして、10曲並んだときに、またアルバム全体を通過する芯のようなものが見えるような作品にしたかった。

曲がようやく揃って、そこからが苦しい苦しいミキシングだね(笑)。

プラグインの力を借りながら、自分の理想の音に近づけていくんだ。

「あちらを立てればこちらが立たず」を繰り返しながら、着地点を探す。

苦しいけれど楽しい作業だったな。

そして最後にマスタリング。

アルバムのイントロ、中間部、アウトロに同じビートを入れて、円環構造にしたのさ。

やはり曲単位というよりは、アルバムで通して楽しんでもらいたいからだよ。

できあがったものをプレス会社でプレス。

ジャケットやバックインレイ、キャップを印刷屋に発注。

特典のステッカーと英訳のライナーを挟み込んで自分で組み立て。

———-なかなか豪華な仕様じゃないか。

このあたりはさすが自主制作、いくらでも無理が効く(笑)。

最後にキャラメルラッピングも外注し、アルバムは無事完成したってわけ。

これは僕の化身のようなものだ

———-出来栄えには満足してる?

出来上がったものを改めて聴き直してみると…ミスも目立つものなんだよね。

ノイズが残ってしまった箇所もあるし、各パートのバランスが少し悪いものもある。

でもこれが、今の自分に作ることができたモノなんだ。

ミスも含めて、これは僕の化身のようなものなんだ。

100枚ほどプレスしたけど、まあ書籍と同じで腐るものではないし、長い時間をかけて少しでも多くの人の手元に届いたら嬉しいね。

最後に

———-一から十まで一人で作ったのかい?

いいや、お世話になった人もいるよ。

まず、アートワークの写真を提供してくれた漆芸家の天野琴音さん。

ジャケットのアートディレクションとバックコーラスまでお願いしてしまった、忙しいだろうに申し訳ない。

———-このジャケットは、絵画かい?

ジャケ写は「ウエス」という布で、たくさんの色の漆がランダムに付いた様はまるで抽象画、このアルバムにも通底するものがあるように感じられたんだよ。

見た瞬間に感じたよ、これこそが僕が求めていたアートワークだってね。

そして、コーラスで参加してくれたYOSHIFUMI。

活動が止まっていたDJユニットの「MIDNIGHT CLUB HEAVEN」も再開するそうで、そんな忙しい折にコーラス録りにきてくれてありがたいね。

———-しかも「オイ!」って叫ぶだけっていうね(笑)。

それでも彼は楽しみながらやってくれた、完璧な仕事だったね。

———-じゃあ最後になにか一言、お願いできるかい?

ええと、何を言えばいいのかな?

そうだな、アートは不要不急ではないよ。

多くのアーティストがそうだと思うけど、人の心を変える力を持っていると僕は信じている。

ニューアルバム、ぜひ楽しんでみてくれよな、STAY METAL!

 

2022.2.17 Freakz

聞き手

マルセルク・アダムス・ガレット:詭弁研究科

 

 

 

 

 

 

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