今までになかったコト満載
どんどん音楽性が変化していき、結局どこに行き着くか分からぬまま解散してしまった「Carcass」。
その才能や異質さは、他を圧倒するパワーを持っていた。
1stアルバム「Reek of Putrefaction」、
2ndアルバム「Symphonies of Sickness」では超劣悪な音質(特に1st!)で、グッチャグッチャのグラインドコアを展開。
演奏力より勢いを重視したり、医学用語の並ぶ歌詞、グロテスクなジャケットワークなど、今までになかったコト満載。
その作風は新たなフォロワーを生み続け、「ゴアグラインド」というひとつのジャンルをも形成した。
3rdアルバム「Necroticism – Descanting the Insalubrious」では音質は改善され、演奏にも整合感が生まれ、一般的なデスメタルに接近した。
従来のファンからは批判され、デスメタルファンからは歓迎されることとなった。
相容れないはずの二つの要素が、今にも分離しそうなギリギリのラインで融合
そして4thアルバム「Heartwork」だ。
このアルバムは不安定で危なっかしいバランスの上に成り立っている気がする。
グラインドコアの要素も残っている中で、流麗なメロディーの導入。
そもそも相容れないはずの二つの要素が、今にも分離しそうなギリギリのラインで融合している。
だからこそこの音楽性は長続きしなかったし、そしてまた私には奇跡の名盤に思えるのだ。
昨今の隆盛を見ると、デスメタルとメロディはマッチするものということは定説であるが、そこにグラインドコアが入っているというのが、奇跡的なのである。
その先を見てみたかった
5thアルバム「Swansong」ではメロディは減退し、デスメタルからも離れ始めた。
音質、ヴォーカルはデスメタルのもので、音楽的にはオーソドックスなヘヴィメタルへと変化したのだ。
「Heartwork」が好きで買った人の何割がこれを気に入るか、不安なところではあるが、運良く私は「Swansong」も好きになることができた。
この後、もし解散しなかったとしたら、一体どんな作風へと変化していったのだろうか?
全アルバムで物議をかもしてきた偉大なバンドであるだけに、その先を見てみたかった。
2010.4.30 Freakz
(追記)
これを書いたのは2010年だから、まさか「その先」を実際に見ることができるとは思ってもみなかった。
現時点で2枚の新作を発表している。
2013年の「Surgical Steel」と
2021年の「Torn Arteries」だ。
しかし、再結成までにかなりの年月を要しているから、単純に地続きな流れとはいえないかもしれない。
つまり、「Heartwork」と「Swansong」を繋いだ先にある音楽性ではなく、過去5作のいいとこ取りをしたような雰囲気なのだ。
グラインドコア臭も残っている。
ブラストビート時のドタバタ感も健在。
音質は極めてクリアでパワフル。
Bill Steerのヴォーカルパートも復活している。
展開の巧妙さはもはや芸術レベル。
多くの試行錯誤を重ねた彼らの、いわば到達点と言っても良いのではないだろうか。
2022.6.8 Freakz
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