意図的にオーソドックスから遠ざけようとしているように思える
スラッシュメタルバンドの「Annihilator」は一流だ。
知名度こそ、「Metallica」や「Megadeth」、「Slayer」には劣るものの、その実力の高さでは肩を並べている。
「Annihilator」のスラッシュメタルの特徴は、複雑性にある。
一つ一つのリフがとにかく独特。
音使いやリズムを、意図的にオーソドックスから遠ざけようとしているように思える。
ただし、ヘンテコなリフを作っているだけではない。
「Megadeth」のリフにも言えることだが、奇妙なリフでありながら非常にクールだ。
これは頭でっかちでは為しえない芸当だ。
かっこいいリフは心で作るものだからだ。
ぎりぎりのラインで、Annihilatorの曲は疾走する
また曲構成も非常に複雑。
これでもかと現れ続けるリフ、リフ、またリフ。
それらを変拍子を織り込みつつ、意外な展開で繋いでいる。
私は、「Slayer」や「Megadeth」よりも複雑に作ってあるなと感じるほどだ。
複雑のための複雑といった感じだ。
奇怪なリフ然り、奇を衒った構成然り、複雑というものは度を超してくると滑稽に感じるものだ。
そのぎりぎりのラインで、Annihilatorの曲は疾走する。
そのスリルが私にはたまらない。
複雑が影を潜めてしまっている
他にはない魅力を備えたバンドであることは確かだ。
…と魅力を述べたが、これは1st(Alice in Hell)、
2ndアルバム(Never, Neverland)までの話。
3rdアルバム(Set the World on Fire)からはスラッシュメタルから音楽性が離れてしまった。
最近は再びラウドな音楽に回帰しているが、前述の複雑が影を潜めてしまっている(ゼロになったわけではない)。
複雑で知的で、それでいてクール。
それを続けることがどんなに難しいことかを、このバンドが端的に表している。
2009.11.24 Freakz
(追記)
1stと2ndこそ至上、みたいな書き方をしているけれど、他のアルバムにも良い曲がたくさんあるよね。
若い頃の私は少しばかり狭量だった。
他の項でも書いた気がするけど、音楽性の変化自体を否定してはいけない。
「音楽は点じゃなくて線で聴かないと」というのは伊藤政則先生のお言葉。
「Annihilator」は今でも十分にクールである。
2022.3.16 Freakz
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