彼のドラミングの最大の武器はそのプレイの多彩さだ
これだけ複雑でテクニカルなデスメタルをプレイするバンドは他にないだろう。
よく、Flo Mounierのドラミングが話題に上がる。
超高速でありながらあの手数。
確かに圧巻だ。
しかし、ブラストビートに関して言えば、そんなに私の評価は高くない。
以前も書いたが、「どれだけ聴き手のテンションを上げられるか」がブラストビートの肝だ。
彼のブラストビートを聴いても、そんなにテンションは上がらない。
そんなことより、彼のドラミングの最大の武器はそのプレイの多彩さだ。
ジャズをかじっていただけあって、一般のデスメタルには登場しないプレイが満載だ。
それを高速テンポの中で行っているのだから、まさに超人。
息をつく暇がないとはこのこと
しかし、「Cryptopsy」の本当の魅力は、Flo Mounierのドラミングではない。
楽曲の複雑怪奇さだ。
病的な印象を受ける奇怪なリフが次々と現れては消える。
息をつく暇がないとはこのことだ。
展開がめまぐるしく変化し、同じパートの繰り返しが余り見られない。
次々とリフやリズムが変化していくので、聴き手はかなりパワーを使う。
アルバム1枚を通して聴くとハンパ無く疲れる。
アルバムの曲全部つなげて1曲だけにしたらどうか
繰り返しが少ないという特徴は、「Blind Guardian」と似ている。
また、次の展開が予測できないと言う点は、初期「Children of Bodom」みたいだ。
しかし、ただひとつの弱点がある。
1曲に数多くのパートが登場するため、1曲ごとの印象がぼやけてしまっているのだ。
曲単位での特徴、カラーが出ていない。
むしろ、アルバムの曲全部つなげて1曲だけにしたらどうかと思うほどだ。
ただこれは贅沢というもので、ないものねだりみたいなものだ。
「Cryptopsy」は、滅多に味わえない感覚をくれる、希有なバンドなのは間違いない。
2009.11.26 Freakz
(追記)
その後、LoudPark12で生の「Cryptopsy」を観ることができた。
さすがの貫禄で、オーディエンスもかなり盛り上がっていた。
自分はといえば、ほとんどドラミングばかりを眺めていたような気がする。
ライブのラストにプレイされた名曲「Phobophile」のように、聴き込めば曲ごとの個性も見えてくるのかもしれない。
2022.6.22 Freakz
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